「閉店しようと決めたのに、費用がいくらかかるかわからなくて動けない」——そんな状況ではないでしょうか。実は飲食店の閉店には、原状回復費・厨房機器の撤去・各種精算など、さまざまな費用が重なります。この記事では閉店費用の全体像と、費用を大幅に減らせる「居抜き売却」という選択肢をわかりやすく解説します。費用の不安が少しでも軽くなれば幸いです。
飲食店の閉店費用は平均いくら?まず全体像を把握しよう
飲食店の閉店にかかる費用の目安は、家賃の半年〜1年分と言われることが多いです。たとえば月額家賃30万円なら、180万〜360万円が一つの目安です。ただし物件の条件によっては1,000万円を超えることもあります。
費用の主な内訳は次の6つです。
| 費用項目 | 目安金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 原状回復工事 | 坪5〜10万円 | 20坪で100〜200万円。特殊物件は別途 |
| 厨房機器・看板の撤去 | 10〜50万円 | 機器の状態次第で買取になる場合も |
| 在庫・食材の処分 | 数万〜20万円 | 廃棄・返品・売却で変動 |
| 従業員への退職金・精算 | 規模による | 雇用保険の手続きも必要(社労士に相談推奨) |
| 各種解約手続き費 | 数万円〜 | ガス・電気・POSシステム等の解約金 |
| 保証金・敷金の精算 | 物件による | 原状回復費用と相殺されることが多い |
これらが一度に重なるため、資金不足に陥るオーナーも少なくありません。まずは費用の全体像を把握し、一つひとつ整理していくことが大切です。
閉店費用で最大のウェイトを占める「原状回復費用」の実態
閉店費用の中で最も金額が大きくなりやすいのが、原状回復工事です。原状回復とは、賃貸物件を入居前の状態(スケルトン)に戻す工事のことです。飲食店は一般のオフィスや住居と異なり、厨房設備・換気ダクト・グリーストラップなど大掛かりな設備が入っているため、工事費用も高くなります。
原状回復費用の相場
一般的な飲食店の原状回復費用の目安は坪5〜10万円です。ただし、ターミナル駅近くの商業ビルや特殊な物件ではこの何倍もの費用になることがあります。
| 物件タイプ | 坪単価の目安 | 20坪の場合 |
|---|---|---|
| 一般的な路面店・雑居ビル | 5〜10万円 | 100〜200万円 |
| 駅ビル・商業施設 | 10〜30万円 | 200〜600万円 |
| 高架下・特殊構造物件 | 30万円〜 | 600万円〜 |
「指定業者」問題——相見積もりが取れない現実
原状回復工事では、ビルオーナーや管理会社が指定した業者しか使えないケースが多くあります。これは、退去者が独自に安い業者を手配すると、ビル全体の給排水・ガス・電気設備に影響を与えるリスクがあるためです。ビルの構造を熟知した指定業者に限定することで、建物全体の安全を守るという理由があります。
しかし現実には、相見積もりが取れないために費用が高額になりやすく、場合によってはオーナーや管理会社が業者からバックマージンを受け取っているケースもあります。指定業者制度の存在は、入居時の契約書に記載されていても、実際の金額は退去時の見積もりが出るまでわかりません。
弊社が担当した実際の事例:高架下の30坪の物件で、退去時に原状回復費用として1,800万円の見積もりが提示されました。電鉄系の子会社が指定業者となっており、テナント側には業者を選ぶ余地がありませんでした。「支払うしかない」と思い詰めていたオーナーの知人である社労士が弊社を紹介してくださり、居抜き売却に切り替えた結果、原状回復費用はゼロになりました。この物件は定期借家で残存期間が短く、造作は無償譲渡となったため売却益は生じていませんが、1,800万円の負担をまるごと回避できたことの意味は大きいものでした。
この事例のように、高架下や商業ビルの特殊物件では原状回復費用が極端に高額になることがあります。原状回復の見積もりが出る前に、居抜き売却の可能性を検討することが重要です。
原状回復以外の閉店費用を詳しく見る
厨房機器・看板の撤去
原状回復工事に含まれない厨房機器(冷蔵庫・フライヤー・食洗機など)や看板の撤去は、別途費用がかかります。産業廃棄物として処分する場合、1点あたり1〜3万円程度の処分費用が発生します。ただし、製造年が新しい機器や有名メーカーの厨房機器は買取に出せる場合もあり、うまく活用すると費用を相殺できます。
繁忙期は割増料金に注意
引っ越し業者や撤去業者と同様に、工事・撤去業者も3月・12月は繁忙期となり、通常より10〜30%程度割増になることがあります。閉店時期を調整できる場合は、繁忙期を避けることも費用節約の一つの手段です。
従業員への退職精算
従業員を雇用している場合、給与の最終精算・有給休暇の消化または買取・雇用保険の離職票発行などの手続きが必要です。退職金規程がある場合は退職金も発生します。具体的な手続きや金額については、社会保険労務士への相談をおすすめします。
各種契約の解約費用
ガス・電気・水道の名義変更手続きのほか、POSレジシステム・ネット回線・BGMサービスなどのリース・サブスクリプション契約には解約金や違約金が発生することがあります。契約書を早めに確認しておきましょう。
閉店費用を大幅に減らす方法——居抜き売却という選択
閉店費用の節約に最も効果的なのが居抜き売却(造作譲渡)です。内装・設備をそのままの状態で次のテナントに売却することで、原状回復費用が不要になるだけでなく、売却益を得られます。
先ほどご紹介した高架下30坪の事例では、原状回復費1,800万円の負担がまるごと回避されました(この事例は造作が無償譲渡だったため、売却代金は発生していません)。原状回復を行う場合と、費用ゼロで退去できた場合の差額は、単純計算で1,800万円になります。
| 比較項目 | 原状回復して退去 | 居抜き売却 |
|---|---|---|
| 原状回復費用 | ▲100万〜数千万円 | 0円 |
| 厨房機器・内装の価値 | 0円(撤去費用が別途) | +売却益(立地・設備次第) |
| 手元に残る金額の差 | マイナス大 | マイナス小〜プラスも可能 |
ただし居抜き売却には、貸主(ビルオーナー)の承諾が必要です。また、閉店を決めてから売り手を探すため、ある程度の時間的余裕が必要です。資金が底をつく前に早めに相談することをおすすめします。
厨房機器の買取を活用する
居抜き売却が難しい場合でも、厨房機器の買取業者に査定を依頼することで費用を一部カバーできます。製造から5年以内の業務用冷蔵庫・コールドテーブル・食洗機などは、買取価格がつくことがあります。廃棄処分する前に、まず査定に出してみましょう。
廃業時に見落としがちな節税の可能性
閉店・廃業の年度は、多くの場合大きな赤字になります。この赤字を前年の黒字と相殺できる「繰戻し還付(くりもどしかんぷ)」という制度があります。廃業年度の赤字額に応じて、前年に支払った法人税(または所得税)の一部が還付される可能性があります。
ただし、この制度の適用条件や申請方法は複雑です。必ず税理士への相談を経て手続きを行ってください。見落としがちな制度ですが、まとまった金額が戻ってくることもあります。
よくある質問
飲食店の閉店費用はどのくらいかかりますか?
一般的な目安は家賃の半年〜1年分です。月額家賃30万円なら180万〜360万円程度ですが、特殊な物件では1,000万円を超えることもあります。最も大きな費用項目は原状回復工事(坪5〜10万円)で、これを居抜き売却で回避できるかどうかで総額が大きく変わります。
原状回復費用を安くする方法はありますか?
最も効果的な方法は居抜き売却です。次のテナントに内装・設備をそのまま売却することで、原状回復工事が不要になります。指定業者制度がある物件では相見積もりが取れないため、費用を下げること自体が難しい場合があります。まずは居抜き売却が可能かどうかを確認するのが先決です。
閉店費用が払えない場合はどうすればいいですか?
閉店費用が用意できない場合も、焦らず選択肢を整理してください。居抜き売却で得た売却益を閉店費用に充てる方法があります。また、廃業年度の赤字は繰戻し還付で一部が戻る可能性があります。状況によっては弁護士・税理士への相談も有効です。「支払えないから動けない」と思い込む前に、専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ——閉店費用の全体像を把握して、最善の選択を
飲食店の閉店費用は、原状回復・厨房機器撤去・各種精算など複数の費用が重なるため、想像以上に大きくなるケースがあります。特に高架下や商業ビルなどの特殊物件では、原状回復費用だけで1,000万円を超えることも珍しくありません。
費用を抑えるための最大の手段は居抜き売却です。原状回復費用の免除に加え、内装・設備が売却益になるため、資金面での余裕を生み出せます。閉店を考え始めた早い段階で居抜き売却の可能性を確認することが、費用負担を最小限に抑える鍵です。
一人で抱え込まず、まず現状を専門家に話してみてください。
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